「ミトシくん、遅いな。寝坊?それとも人通りが多くてここまで来れないとか……まさか途中で何かあったんじゃ……」 「仮にも警備隊員だぞ?遅れているだけだろ」
アキは心配しすぎだ、とカヤナが呆れた声で言う。その間も、アキはそわそわとその場を行ったり来たりしていた。
「ふふ。アキ、何してるの?」
背後からかけられた声に、アキはびっくりして勢いよく振り帰る。
「ミトシくん!?……よかった」
アキが両手でミトシの手を取ると、ミトシは不思議そうに目を瞬いた。
「ううん。なんでもないなら、いいのよ。さ、今日はどこに行きたいんだっけ」
手を離すアキを、ミトシがじっと見つめる。 アキはどうして良いかわからず、ミトシが喋り出すのを待った。
「アキ、元気ない。……待たせたから?違う。出かけてる間に何かあった……?」
もっと深く探ろうとするミトシが、アキの手を取ろうとする。アキは咄嗟に手を引っ込めた。ミトシが口をとがらせる。
「ご、ごめん。でも、見るのはだめ」 「わかった。見ない。……こっち」
ミトシが人ごみをすたすたとすり抜けていく。全く避ける意識のなさそうなミトシを、周囲が避けて通っていると言う感じだ。アキは慌てて後をついていった。
「ここ?」
うん、とミトシが頷く。ミトシは広場点在するベンチの一つを選ぶと、そのひとつに座った。それにならって、アキも腰をかける。
「ここで何かあるの?」 「……わからない。なんとなく、……勘」 「なんか、天気も良いし、座ったら眠たくなってきたかも……」 「アキ、寝るの?」 「寝ないよ、寝ないけど……」
すっかり瞼を落としてしまったアキの隣で、ミトシはぼんやりと街の喧噪を眺めていた。隣からはすうすうと規則正しい寝息が聞こえてくる。そういえば、と俯くアキに視線をやった。
「今日はおとなしく寝てる」
以前一度聞いたアキの寝息を思い出し、くすりと笑う。街中だと言うのに、あの時と同じで気持よさそうに油断しきった顔をしている。ミトシは頬を緩ませた。
「僕が守ってあげなきゃ」
その後、目を覚ましたアキはミトシに平謝りするが、不機嫌どころか上機嫌なミトシに疑問符が絶えない様子だった。
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