言い換えると
/いっぱい抱きしめたい

ガイ×ナタリア

日頃ナタリアは、彼の特異体質を思って無闇に近づいたりはせず言葉を交わす際にも不便だが彼のためにと距離を置いてきた。と言うのに、アニスなどがからかい半分で抱きつく様子を見ていると(彼女の年齢や天真爛漫さから許される事なのかもしれないけれど)自分のしてきた事を押し付けてわかって欲しいと言うつもりはなくとも果たしてこの忍耐に何か意味はあるのかと思えてくる。意を決して、呼びかけた彼が振り返った隙を見て距離をつめる。体ごと体当たりをして、案の定逃げようとするガイを逃がすまいと胴にまわした腕をめいっぱいのばして、自身のもう片方の手を掴む。

「な……、ナタリア?」

頑丈に取り囲まれたガイは、振りほどく事もできず顔を青白くさせている。

「逃がしませんわ。」

そのままの体勢で数秒たって、見上げた彼はすっかり硬直しており、小刻みに震える様子や冷や汗を流しているのを見るとどうにも思い描いていたものとは違い、ナタリアは肩を落とした。

「全然ダメですわね」

解放されたことにさえガイは気付いていない。こんな進展のない恋人に、いい加減根を上げてしまおうかと思う事もある。だと言うのに、そんな想いがよぎるたびに優しい言葉をかけてくるし、慕っているなどと口にして、ずるい。やっと意識を取り戻したガイが、またナタリアと一歩距離を置く。

「キミが少し強情で、助かる」
「どうも気持ちに行動が伴っていませんわね」

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