言い換えると
/いつも傍にいたい

ガイ×ナタリア

「昇降機が調整中?」
「はい。ですのでしばらく中心街への移動はお控えください」
「それでは困ります!」

ナタリアが兵へ講義の声をあげているころ、港についたガイもちょうど同じ話題を耳にしていた。ルークの屋敷にいた頃も不定期に行われる点検で中心街との行き来を制限されていたのを思い出す。故障などでなく、ただの点検であれば良いが。

「復旧の目処は立っているのか?」
「2,3時間程みて頂ければ」

復旧するのであれば良い。今回は数日間滞在するつもりでいたし、元から港に着くのも正午過ぎとわかっていたのでナタリアを連れて出掛けるにしても翌日からと考えていた。では、空いた時間で彼女に何か手土産でもと商業区へ足を運ぶ。この辺りの地理には慣れたもので、一回りしても目新しいものは見当たらない。結局無難な一箇所にたどり着いてしまった。鮮やかな色をしたものたちの中から、彼女の好みそうなものを探す。このときばかりは、ペールが言っていたような花の名前や意味を真面目に聞いていればよかったと実感しざるをえない。

「私にくださるの?」

ふと、知った声に振り返る。肩口の開いた新調したての服は最近の若い娘たちが好んで着る物で一瞬目を瞬いたが見紛うことなくナタリアだった。

「ブーケなら結構です。苗の方が嬉しいのですけど。」

言って自然と隣に並ぶ彼女に、正直に胸のうちの言葉を紡ぐ。

「まさかこんな所で会えると思ってなかった。城を出ていたのかい?」
「いいえ。いつもの昇降機が使えなかったので、城内非常用の昇降機を使いました。」
「非常用とはまた……」

彼女の行動力を侮ってはいけない。城の兵たちもさぞ振り回されたことだろうと考えて、少し頭が痛くなるのを感じた。

「十分に非常事態ですわ。あなたはどうせ、すぐに戻ってしまうのですから」

再会早々はじまりかけた小言に、気分を損ねさせてしまったようた。ナタリアが、ガイを通り過ぎ花に手を伸ばし始める。これはいけないとガイの方を見向きもしないナタリアに言葉をかける。

「嬉しいよ。来てくれて」

そして彼女が向ける、幾日かぶりの笑顔。
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