賑やかな食卓

「おじいちゃん!」

勢いよく扉を開け放つと、派手な音が辺りに響き渡った。トウラがゆっくりと体の向きを変えながら口を開く。

「アキ、一体何時だと思っとるんじゃ。近所に迷惑じゃろうが」
「ご、ごめんなさい。でも、一刻も早くおじいちゃんに会わせたくて……」

戸口の外にいるウキツを見ると、なんだか気まずそうな顔をしていた。アキはおかまいなしで、ウキツの手をぐいぐいと引っ張り家の中へ誘導する。トウラとウキツはお互いに面識があった。当然トウラもウキツに気がついたようだ。

「…………ウキツ君、か……?ワシは夢でも見とるんじゃろうか」
「夢じゃないのよ、おじいちゃん。ウキツが帰ってきたの!」
「帰ってきたって……一体どうなって……」
「アキ。んな突然じゃじーさん驚くって」

ウキツに窘められ、アキは少ししゅんとなりながらトウラの腕に巻きつくのをやめる。トウラはまだ驚いた表情をしていたが、少しして、そうか、そうかと呟くように言った。

「……もちろん、今日は泊っていけるんじゃろう?」
「え……、あ、そうしてもらえっと、助かるんすけど……」
「良いに決まってるじゃろう。アキ、これはご馳走を作らないといかんぞ」
「うん!……って言っても、今から買い物に行ってたら遅くなっちゃうし……有り合わせになっちゃうけど」

アキが張り切って準備に取り掛かる。困惑気味で立ち尽くしていたウキツが、トウラに招かれ近くに腰を落ち着けた。

「驚かねーのか……?」
「驚いとるさ。じゃが、アキがあんなに楽しそうな顔をしているのは久しぶりなんじゃよ。今はそれでいいじゃろ?」
「……さすがだな。やっぱじーさんには敵わねーよ」

トウラの話を聞きながら、ウキツはくくっと喉を鳴らして笑う。ほどなくしてアキがやって来ると、食卓に摘み物を並べた。

「おじいちゃんはお酒控えてるんだけど、ウキツは飲むよね?」

マテ酒を注ごうとすると、ウキツは少しためらう様子を見せてからグラスを傾ける。

「おう。でも、ちっとだけな」
「……え?も、もしかして、やっぱり具合が悪いんじゃ……」
「な、なんて顔してんだよ。ちげーって。まあ、オレが酒飲まねーっつーのは確かに珍しいけどさ…………飲むよ。飲みゃいーんだろ!」
「よかった」

にっこりと笑顔になるアキに、ウキツはわかりやすくため息をついた。

「どー言う認識だ……ったく」



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