認めるしかない気持ち
「どーなってんだ一体……」
てくてくと向かいの建物へ歩いて行くアキを、ウキツは窓から目で追う。夜中だったので、どこか行くのか、着いて行った方がいいか、と確認をすると、アキは心配ありませんよ、と答えた。夕飯を沢山作ったから、監視部屋にいるサナトの所にも持って行く、のだそうだ。
「んな事ならもっと食っときゃよかった……。……って何言ってんだオレ。そーじゃなくて!」
アキのそう言う性格はタカマハラにいる頃から変わっていない。ウキツとしても、そう言う面倒見の良い所は嫌いではなかった。だが、ここはヤスナだ。ヤスナの人間と親しくなっているなんて、否、サナトとまで打ち解けようとしているなんて予想もしていなかった。
「ま、そうなっちまってるもんは仕方ねーよな。……けど契約はねーだろ、契約は」
正直、アキがまだカヌチなんてレベルの鍛冶師だとは思えていない。ヤスナに来てどのくらい腕が上がったのか知らないが、そもそもカヌチと言うのは何年も鍛冶をやってきた熟練の鍛冶師が、自分の仕事の集大成としてなるものだと思っていた。アキがそこにたどり着くのは、まだずっと先の事だと思っていたのだ。
「もうクマヒ持ってるってなんだよ……サナトって、なんだよ……」
クマヒを持っているとなれば、話は大分変わってくる。自分がもう少し来るのが遅かったら、アキはもうサナトと契約を済ませていたのだろうか。考えるだけで無性に腹が立ってくる。既に出遅れてはいるが、アキもまだ迷っているような部分があるだけ幾分かマシだ。自分はどうしたいのかと考えてみる。まず、サナトとの契約をやめさせたい。どうしてやめさせたいのかと言うと、サナトが気に食わないからだ。では、そう言えばアキは引き下がるだろうか。
「よけー意地になりそーだな、アキのやつ」
何より、自分はどうしてここまで気にしているのか。悔しいが、なんとなくわかる。結局誰と契約されても、自分以外と契約されるのならばウキツは嫌なのだ。
「……じゃどーすりゃいーんだよ!」
「ど、どうしたんですか……?」
「へ……?」
声のする方を見ると、帰って来ていたらしいアキが呆然とウキツを見ていた。
「お、……おかえり」
「……ただいま、です」
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