友達

ヨロハへ行くためにと借りた馬を返し、家へ向かう途中だった。

「お、どっか行ってたんか?」
「ウキツさん。はい。ヨロハに行ってきたんです」

そう答え、笑顔を返す。会うのは一週間以上ぶりで、ウキツが街中で何者かに襲われているのを見た時以来だ。アキが気になっていた事を聞くべきかどうか考えていると、先にウキツが話を始めた。

「なんか、すっきりした顔してんな」
「え……そうですか?」
「品評会の剣ができたんか?」
「いいえ。まだです。でも、がんばるって、そう決めてきました」
「へー。そりゃよかった」

不意に手を差し出される。アキがきょとんとしていると、ウキツは強引にアキの荷物を取り上げた。

「なんだこの大荷物。石じゃなさそーだけど」
「おじいちゃんと、それから村の人が野菜や果物をくれたんです。こっちの食材は高くて……節約生活なので、すごく助かるんですよ」
「なるほどなー。向こうで取ればタダだしな」

どうやら家まで荷物を運んでくれる気らしい。お礼を言うアキに、ウキツは照れくさそうにして、ついでだ、と言った。

「なあ」
「はい?」
「お前に戻ったみたいだから言うけどさ。なんつーか、カヤナに向かって言うんじゃ言った気にならねーからさ……」

つぶやくようなウキツの言葉にアキは首を傾げる。

「お前がこうやって鍛冶できてんのは、カヤナの力があってこそだ。アキががんばってねーとは言わねーが、正直、お前の考え方は甘い。甘いって一言じゃたりねーくらい甘い。鍛冶始めてほんの数ヶ月しかたってないヤツが一人で一人前だなんて、認めろっつわれたって普通無理だろ?」

自分で受け入れた事とはいえ、はっきり言われるとまだ耳が痛い。しかしウキツの言葉はまだ続いている。

「……けど、な。……素直に反省した所は、悪くないっつーか。……認めてやってないわけでもない」

自分に向けられた言葉とは思えず、アキはつい足を止めた。

「はい……?」
「それに、オレにあれこれ言われて、それでもめげなかったヤツって……なんだかんだ言って、続くんだよな」
「話が読めないんですけど……続くって何がです?」
「わかんなくていーんだよ。ま、そーいうこった」
「……はあ」

何の事だろうと考えても、すぐには思いつかない。気の抜けた返事をするアキに対し、ウキツは赤くなった顔をそらした。



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