sailing day
ウキツが戻ってから数日、畑の仕事を手伝ってもらったり、素材を取りに行くのに着いてきてもらったりしながら、驚くほどゆったりとした毎日をおくっていた。今は買い物に行った帰りで、ウキツと並んで街道を歩いている。
「さーてと。これからどーすっかな」
「どうするって?」
「ずっとじーさんとこで世話になるわけにもいかねーだろ。なあ、城のやつらはどーしてるか知ってっか?」
アキは少し目を伏せ、横目でウキツの様子をうかがった。
「クラトさんがたまにこっちへ来て、色々教えてくれたり……みんな元気にしているみたい」
「そか。とりあえず、オレも城に戻っかな。警備隊に戻らしてもらえるかはわかんねーけど」
返事に詰まるアキに気づいているのか、いないのか、ウキツは前を向いたまま言葉を続ける。
「お前はどーしたい?」
「え?私?」
「そ。……オレとしてはだな、……いや、別にこっちだって来ようと思えば会いに来れるんだが、その、」
歯切れの悪いウキツに、アキはなんですか、と聞き返した。こちらを見ようともしないウキツに、アキは心細くなる。足を止めるとウキツもそれに気が付き歩みを止めた。
「一緒に来て欲しい」
「はい……?」
「だから、オレはあっちに戻る。んで、お前が嫌じゃなきゃ、だけど、お前も一緒に来てくれたら、……って」
突然の提案に、アキは呆然とする。
「ほら、お前が店やってたとこ、確かお前がさらわれた時のまま残ってるしよ。ギルドの人が次に貸さないでとっといてくれてんだよ。だから家の心配はねーしさ。ま、ちゃんとした家はおいおい考えるとして……」
アキは上の空で、最後のつぶやきは全く頭に入ってこなかった。けれども、頭の中でひとつの結論にたどり着き、アキは元気よく頷いた。
「ん?」
「うん。私、ウキツと一緒にヤカミに行く」
「本当か?」
「うんっ」
「……よく考えなくていーのか?じーさん、きっとこっちに残るんだろ?」
「うん。おじいちゃんに話してみる」
「そか……つーか返事早ぇな」
「え?だめだった?」
「いや、んなことねーよ。じゃ、もーひとつ」
ウキツがアキの両肩に手を置き、今度はしっかりと目を見て言う。
「契約する。こっちにいるうちに。だから、色々とあるだろーから、準備とか、気持ちの整理とか、ちゃんとしとけ」
「うん。わかった」
微笑みかけると、ウキツも頷き、肩から手を離した。そのまま歩きだすので、アキは小走りで後を追って隣に寄り添う。空いている方の手を取って握ると、ウキツは口をつぐんだままだったけれど、少し歩く速度を緩めた。
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