君を好きになって
どれくらいたったのだろうか

ガイ×ナタリア

長すぎる時間をかけてようやく想いに気づいた今、彼女を好きだと言う想いにはそれなりの自信があるが、自分が恋人としてどうかと問われると堂々と胸を張れないところがある。未だ手を握るにも冷や汗をかき、ぎくしゃくとした動きをしては周りにからかわれ、いい加減愛想をつかされるんじゃないだろうか。

「深刻そうな顔をしてどうしましたの?」
「あ、いや、なにも。」

街では少しの混雑でも引き離され、並んで歩く事すらできない。手を繋げたところで、ナタリア以外の女性にはそれ以上に近づく事ができないので、女性を避けてあっちへこっちへ、結局は人の2倍かけて移動しなければならない。連れ回されるナタリアからしてみればいい迷惑である。人の波を抜けようやく腰を落ち着ける。背に噴水の音を聴きながら、ちょうど人通りの多い時間にやってきてしまった事をガイは早速後悔していた。

「やはり息抜きは必要ですわね。強引にでも連れ出してよかったです。」

満面の笑みに、申し訳ないと言う気持ちが募る。以前までは熱心に女性恐怖症克服を唱えていたナタリアが、最近はその話題を口に出さなくなっていた。

「これでも?」
「またそうやってひねくれた言い方を……ガイらしくなくて嫌ですわ。」
「……、すまない。」
「そうやって頭を下げるのも気に入りません。もう少し明るく振舞いなさい。せっかくのデートなんですから。」
「心掛けます。」
「お願いしますわ。」

言われたとおりに、と意識してみるが、周りを見渡せば仲の良さそうな男女が多く、一人分のスペースを空けて座らなければならない自分がまた情けなくなってきた。そんなガイを見てナタリアもため息をつく。口をへの字にして腕組みをしたと言うことは、これから叱咤が始まるのだろうか。

「ガイ。そんなに気に病まないで。もっと自信を持ちなさい。」
「ああ。……え、自信?」

この体質に?と目を丸くすると、ナタリアはきっぱりそうですと言った。

「私達は不純な動機なく、ただ好きだと言う感情だけで一緒にいられるんです。心だけでもつながっていられると胸を張って言える関係は、そう簡単に築けるものではないでしょう。触れるから不純どうこうと言うわけではありませんけれど……」

予想外の言葉と精一杯の気遣いに胸が詰まる。唇を噛み、気付けばナタリアを引き寄せ横抱きにしていた。すっかり気を抜いていたナタリアは、なされるまま、突然のガイの行動に驚き慌てて言葉を付け足す。

「いえ、あの、別にそうされるのが嫌というわけでは」

どうしてナタリアにここまでしてもらわないと自分は動けないのだろうか。まったく都合よく出来た体質だとあざけりたくなってくるが、それはガイがナタリアを想う気持ちに嘘偽りは微塵もないと言う証明のように思えた。衝動的に、気がついたら触れているなんて事は他にない。それこそ、人命救助でさえ一瞬は身構えてしまうのだ。

「いつまでそうしているつもりですの」

見ればナタリアがにわかに顔を赤らめ腕から逃れようとしている。こう言う表情はあまり見ないかもしれない。まじまじと眺めると、ナタリアが形の良い眉をつりあげこちらを睨んだ。

「どうせ誰も見てない。こっちは今離したら、今度いつ触れられるかわからないんだよ。」
「開き直られても困ります。触れたいなら早く克服すれば良いのですわ。」
「……さっきと言ってる事違うよな。」
「立ち直ったのなら話は別です。時と場所を考えなさい。あなたはこう言う事に関してあまり人目を気にしないから」

理不尽だ。どれもこれも原因はナタリアだし、こちらとしても滅多にないチャンスを逃すわけにはいかない。でも、腕の中で赤面しながら怒られるなんて状況がまた新鮮で、少しくらい理不尽でも構わない気がしてしまう。

「ガイ、聞いていますの?」
「聞いてる、聞いてる。」
「だったらこの腕を」

もう十分に彼女を好きになっていたつもりでいたのに、未だ限界は見えない。

postscript
GNfes提出品。