西の塔でふたり

ガイ×ナタリア

「……え?」
「え?」
「どうしたんだ?」

彼女のリクエストでここまでやってきたというのに、顔をあわせた途端にため息なんてつかれてしまいガイは狼狽した。

「来ない方がよかったとか」
「いいえ?」

まるでなんのことだかわからないと首を傾げるナタリアに、杞憂であったかとホッと胸を撫で下ろす。

「あなたが来るまでに時間があったので空を見ていたのですけど、生憎の曇り空で……これではせっかくの相会が台無しですわね」

ガイたちが今いるのは雨風の干渉を受けるような場所ではないので、これは昼間話していたこの地域の風習、星祭に関しての一言だろうと考え合点がいった。

「曇っていては会えませんものね。」
「うーん。会えるんじゃないか。こちらからは見えないだけで。」
「そうなんですの?……ガイが言うならそうなのかしら。」
「隠れて会いやすいくらいかもしれないな。」
「まあ。私は心配していたのにその方が良いだなんて。」

特に根拠があって言ったわけではないが、自分が言うのならばなんて表現をしてもらえるのは嬉しい。すっかり見えないだけで会えている説を信じ込んだナタリアは、口を尖らせ彼らに文句を言っている。

「今の君の状況も似たようなものじゃないか。」

ふと思ったことを口にしてみたが、あまりピンと来なかったようでナタリアが目を丸くする。ガイは指を立ててこちらに意識を向けさせた。

「隠れて使用人なんか呼び出して。」
「そういう言い方は、おやめなさい。」

こちらの言いたい事がわかったらしく、ナタリアは微笑みながらガイの揶揄を咎める。

「でも本当に、」

呟いたナタリアが目を瞬き考えるような仕草をしたので、そのまま次の言葉を待つ。

「だとしたら彼らは心配する必要なんてないほどに幸せ者たちですわね」
「まったくキミの言う通りだ。」

思わず抱き込んで頭を撫でれば、ナタリアが片耳をあてるように胸にもたれかかってくる。

「それにその方法なら年に1度と言わず週に何度も会っていることになりますわね。」

そこまで自分たちにあてはめなくともと思ったが、あまりに真剣な顔をしてかわいい事を言ってくれるので、ガイは苦笑いをしながらも抱き込める腕にまた力をいれてしまったのである。

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