道化者

ガイ×ナタリア

どんなに説得しようとも、理解しがたい理由で頑なに嫌だと言われ、上着を貸すにも自分の物にその露出を防ぐ効果は無く。多少強引とわかっていても、こうするしかないと思った。

「どこでもいいから、ここから一番近い街へ。ああ、でもできれば田舎でない所へ」

操縦席に座るノエルが一瞬困った顔をする。

「ガイ、そんな言い方ではノエルが困ってしまいますわ」

困っているのはこっち、と言う言葉を飲み込む。ナタリアの格好を見て状況を理解したノエルはそれではバチカルへ、とアルビオールを発進させた。

「いい機会だ。キミは露出する事にあまり抵抗がないようだから、少し改めないか」

アルビオール操縦席の後ろ、何人か座れるスペースを二人で陣取り向かい合う。

「……またそのことですの。大げさですわね。」
「これでも譲れないところと言うのはあるんでね」
「だから、着替えますと言っているでしょう?」
「これに限った事じゃないから言ってるんだ」

引き出した大き目の毛布を彼女にかけ、彼女が当初着ていた普段着も手渡す。

「まず女怪盗の格好。胸元が開きすぎているし、ホットパンツは丈が短すぎる。あと、ピオニー陛下から頂いたあれ……」

「ガイのやつ、ナタリアの洋服全部覚えてやがる……」
「や〜ん。気持ち悪いですわ」
「アニス、混乱するから口真似はやめて」

次々と苦言を繰り出すガイの様子は、まるで音機関の一部が正常に取り付けられていなかった時のようだったと座席を陣取られてしまった所為で起立をよぎなくされていたと言う文句とともに後から聞いた。

「では、バチカルに行って何をしようと言うのです。」

ガイが一通りの不満を吐き出したのち、多少は罪悪感が芽生えてきたのか、それともただ呆れただけかもしれないが、疲れた表情でナタリアがガイの考えを言うよう促す。

「それなんだけど、キミがしたいと望んでいた一般の町娘のようなデートができるよ」
「あんなにダメだと言っていたのに?」
「行き先は勿論洋服店だけどね。だから、せめてそこで町娘の衣類がどういったものかを学んで」

言いかけたところで、アニスがやけに大げさに感嘆の声をあげる。

「で、それを口実に自分の好みに仕立て上げるわけか。」

それではまるで、俺が彼女をあざむいて連れ出すようではないか。俺の立場になったら、誰だってそう考えるさと、ため息とともに吐き出した。

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1万打企画。