温かさに身をよじって目を開けると、窓から差し込む光がちょうどナタリアを照らし始めたところだった。床の固さに、そういえば昨日は空小屋を寝床にしたのだと思い出す。眠たがる目をこすり身体を起こすと、見慣れた背中が目に入る。ナタリアの頭はまだ眠りからさめていないけれど、髪を立てる前の彼の元へ行き、腕を引いて目を閉じれば優しい唇が振ってくるのはもう習慣で、体が覚えていた。いつものようにそうしようと歩み寄る。ちょうど腕を引こうとしたところで、およそ朝には似つかわしくない大きな笑い声が耳に入った。目をやると黒と亜麻色の髪を見つけ、視線をずらすと目立つ赤色の髪、次いでナタリアよりも長い茶色の髪が見えた。何故と疑問符を浮かべていると、目の前の金髪の持ち主が振り返る。
「気持ち良さそうに寝てたから、起こせなかったんだ」
笑みを作りながらも、申し訳ないと言う表情でガイが言う。ナタリアはまだまだ頭が働いておらず、黙ったままで事を理解しようとする。いつもガイは早起きで、ナタリアもそれにあわせるように目を覚まし僅かな二人の時間を作っていた。
今日はナタリアが眠りから覚めなかったために皆が起き出してしまったと言う事らしい。でも、眠りから覚めない時は起こすようにと彼には頼んでいた。ああ、だから目の前の彼は開口一番に謝罪を口にしたのだ。
「謝るくらいなら無理矢理にでも起こすようにと言っていますのに」
これではいつものように挨拶ができないと不満顔をし、ナタリアの表情の変化にあわせて困った顔をするガイに、更に困るとわかって言葉を投げかける。
「私にとってはかかすことのできない日課でしたのに、ガイにとってはそうではないんですのね」
言って肩を落とすと、ガイが反論する術も無いと頭を掻く。
「欠かしてはいないよ。君は眠っていて気付かなかっただろうけど」
二度三度、瞬きをしてガイを窺う。
「そう言う事は、目の覚めている間になさい」
「はい」
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