町娘と騎士さま

アクト×アキ

ヤスナはタカマハラより陽の落ちるのが早く、夜が長い。明るいうちに休める場所を見つけておくべき、と言う同行人の言葉に従い、アキは風しのぎくらいにはなりそうな小さな洞穴を見つけ腰を落ち着けていた。

「もういいだろ、俺の話は」

焚火を前にアキが質問責めをしていると、と言っても、普段は何をしているのかとか趣味はあるのか、と言った事を少し聞いただけだったが、アクトは顔を隠すよ うに外套を持ち上げ視線をそらし、会話を切り上げた。アキはきょとんとして、アクトの顔をまじまじと眺める。

「じろじろ見るな」

見るな、と言う発言は聞こえなかったふりをして、身体を共有するカヤナに問いかけた。

「私、嫌がられるような聞き方してた?」
「いや。当り障りのない質問だったが」
「……だから、その一人なのに二人から聞かれてるみたいなのが嫌なんだっての」

そう言われても、とアキが眉を寄せる。正面に座るアクトがうんざりと言う顔で溜息をついた。

「こんなとこで体力消耗してたら明日に響くぞ。早く寝ろ」
「わ…!」

頭から毛布をかぶせられ、もがいて顔を出す。元から持っていた毛布と、落とされた毛布を両腕に抱えアクトを見ると、アクトは少し歩いて来る、と言って返事も待たずに洞穴を出てしまった。しかたなしに一人で二つの毛布にくるまっていると、途端に強烈な睡魔がおそってくる。アキの意識はそこでとぎれた。

夜が明け移動を再開する。目的地に到着したころ、採取の準備をはじめると、アクトはアキと少し離れた木陰に座りこんだ。

「寝てる……よね?」
「寝ているな」

様子を見ようと近づくと、フード越しに小さく寝息が聞こえてくる。

「監視になってないじゃない」
「そう呆れるな。昨日も寝ずに火の番をしていたようだし、今は休ませてやろう」

カヤナがアキをなだめるのも珍しかったが、一番驚いたのはカヤナの一言だ。思わず聞き返す。

「寝ずに火の番……?」
「見張ってたんだろうさ。この辺りには野盗も出ると言うし」
「……そうなの。知らなかった。なんか、悪かったかな」

アキはしゃがんでアクトの顔をのぞきこむと、起こさないよう、小さい声で言った。

「ちょっと移動するけど、ここで待っててね」

元いた場所から少し移動をし、採取を続ける。しばらくして、眠っていたはずのアクトが視界に入りこんだ。何を言うでもなく、アキの近くに座りこむ。横目で様子をうかがうと、まだまだ眠たそうな顔をしていた。

「全然監視になってないよね」

アクトがしていることは、監視と言うよりふさわしい言葉がある気がしてきて、アキは顔をほころばせる。カヤナが不思議そうにしているので、こんな風に言ったらアクトに怒られそうだけど、と前置きをして答えた。

「守られてるみたいな気になったの」



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