まだ把握しきれていないヤスナの地図をテーブルに広げ、目的の鉱石の採掘地を調べる。向かいで胡坐をかいていたタカミも逆さまの地図をチラリと見た。
「ここに行きたいんだけど」
指を置いて行き先を示し、おそるおそるタカミの様子をうかがう。
「えー。寒いじゃん。やだよ」 「それはそうなんだけど。依頼品の材料だからそろそろ行っておきたいの」 「そういうキツイ所はさ、もっと体力バカみたいなやつと行ってよ」 「た、体力バカって……」
相変わらずマイペースなタカミに翻弄されながら、ついてきてくれそうな人は誰かと考えを巡らせた。と言っても、行きたいと言って嫌だと返すのはタカミくらいで、他の人はもっとすんなり要望を受け入れてくれるのだ。
「険しい山道ってなると、ヒノカ君と……あとサナトさんにはお願いしにくいかな。なんとなく。……やっぱりカスガさんかアクトさん、かな」
顔をあげると、無表情のタカミと目が合う。普段より大人しいのでどうしたのかと思いアキは目を瞬いた。少しして、タカミが口を開く。
「買えば?」 「ん?」 「材料なんて、買えば?って言ってるの」
アキはタカミの言葉にまた瞬きしてから、裕福な家庭で育った彼らしい言葉に眉をしかめた。
「楽してたら商売にならないの」 「アキって、いつもそう言うけどさあ」
タカミが拗ねたように口をとがらせる。今度は何を言い出すのかと構えていると、思いもよらない言葉が返ってきた。
「つまんない。わざわざ家まで来てるんだから、もっと僕の相手してよ」 「はい……?」 「たまには仕事なしで遊んでくれたっていいじゃん」
「いや、タカミは仕事で来てるんだよね?」 「それもあるけど〜」 「それもって、それがメインでしょ?」 「あーあ。アキがもうちょっと冴えてればな〜」 「な、何よ」
こんなやりとりをしばらく続け、結局タカミは最初の目的地に行く事を承諾した。
「もう、タカミの考えてることってさっぱり」
道中、頭を抱えるアキに、タカミがさらに追い打ちをかける。
「アクトとかカスガと一泊も二泊もされたらやだもんね」
「そうなの?なんか、タカミといると一日が長いよ……」 「良いね、それ」
ニヤリと口の端を上げるタカミに、アキはぐったりと肩を落とした。
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