本来ならば三人は座れるであろうソファの端に追いやられ、アキはとられた手と逆の手を黒い皮に沈め体を支えていた。重みからか、はたまた恐怖心からか、アキの腕が震えているのを見て、アクトは意地の悪い笑みを浮かべる。ところが、アキがそのまま無言でいると、アクトはアキの手首を持つ力を弱め、かわりに冷めた目でアキを見た。
「やめろって言わなくなったな」 「…………やめて」
遅いんだよ、と言ってアクトが身体を除ける。アキは姿勢をただし、何事もなかったような顔をした。
「アキ、お前さ」
アクトが続きを言いよどみ、アキが不審そうにそれを見上げる。やがてアクトが続きを言う気はないのだと理解すると、アキは視線を落とし、ぽつりぽつりとこぼした。
「ちょっと似てるかも、なんて思うの。全然違うのはわかってるんだけど、でも。陽の光を浴びるカヤナ。埋もれて、ひねくれるばかりの私。何でもそつなくこなせる、優秀なクラトさん。……アクト」
「俺は解説無しか?」
アキに合わせるように、アクトが静かに言う。アキは顔をあげて笑顔をつくった。
「偉そうで高圧的。そのうえ気まぐれ」 「そりゃどうも」 「だけど、居心地は良い」 「……こんな所に放り込まれて、知ってるやつ見ると安心するってだけだろ」 「あはは、そうかも」 「まったく」
呆れた様子でアクトがつぶやく。アキは目を伏せて笑った。
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