アキが鞄へ荷物をしまっていると、前の椅子に座っていたタカミがこちらへ身体を向けながら、不満そうに、咎めるように言う。
「そんなに慌ててどうしたのさ」 「タカミ、前の子困ってるよ」
アキは質問には答えず、彼の席ではない事を指摘して席を立った。廊下に出て歩きだすと、いつの間にかタカミが後ろを歩いている。
「またあの大学生のとこ行くの?」 「……そんなに行ってないよ?」 「やめといた方がいいってー。遊ばれてるんだよ、絶対」 「だから、そんなんじゃないってば」
下駄箱までたどり着くと、アキは身体を振り向かせてタカミを見た。タカミは驚いた様子で表情を強張らせる。アキはくすりと笑って右手を差し出した。
「あげる」
タカミはアキに手渡された小包をまじまじと眺めてから、口をとがらせる。
「そっちの方がいい」
視線はアキの持つ紙袋に注がれている。
「こ、これはだめ」
不貞腐れるタカミに笑みをこぼしながら校門を目指して歩いていると、存在感のあるバイクと、それの持ち主であろう人物が佇んでいた。アキは見覚えのあるシルエットに目を見開いて、小走りで駆け寄る。
「アクトさん」 「ちょうど通りかかったから。……どうせ後で家に来ると思ったし」 「どうせって、何ですか」 「ほら、行くぞ」
ヘルメットを渡され、後ろに乗るよう促される。アキはふと後ろを振り返って、友人の姿を探した。
「タカミ、じゃあ私、行くから」
準備が出来ても動き出さないバイクに、アキがアクトの顔を覗き込むようにする。アクトはタカミを見ていて、それにならって後ろを見ると、タカミもアクトを見ていた。不穏な空気に耐え切れず、アキがアクトに呼びかけると、それに答えるようにエンジンがかかった。
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